「よーし、今日は解散!」
毎度お馴染み団長の号令に、
SOS団は帰宅の準備に動きだす。
忙しく動き回る女子三人は、
ゲームを片付ける男子二人の間に流れる微妙な空気に気づいてはいなかった。
(一人は気づいていただろうが)
その空気の中。
古泉はキョンにだけ聞こえる小さな声で言った。
「…聞いていたんですね。」
ぴくり、とキョンの指が一瞬動きを止める。
それは数日前の夕刻のこと。
部室で一人眠るキョンに、古泉は一言語りかけた。
それは隠してきた思いのたけをこめた
熱っぽいセリフで。
キョンはそれ寝たフリをしたまま聞いた。
聞いたことを後悔した。
「……。」
古泉は沈黙を肯定と受け取る。
事実その通りだった。
「…そうですか。」
だが、それだけしか言えなかった。
互いに歩めず互いに逃げて、
それでも離れられずに。
でもどこかでそれに安堵していたから。
「さ、二人も帰るわよ。」
「はい。」
「ああ。」
世界は変わろうとした。
だが世界は変えようとしない人間のおかげで
今日も変わらない。
END
うーん、表現できない。難しい;
臆病な二人、のつもりです。